研究概要 |
胸腺・副甲状腺は、発生の過程で器官全体のインテグリティを保ったままで、それを取り囲む間充織細胞群の中を移動する。この際、移動の駆動力の発生源や方向性を決める分子機構などはほとんどわかっていない。本研究では、任意の細胞に接触した細胞を遺伝的にラベルする方法を開発し、これをマウス個体に適用して、個体内で時系列にそって胸腺・副甲状腺と間充織細胞の位置関係を明らかにする。 本年度はまず、この方法の開発に必要なNotch受容体の線虫ホモログであるLin12の細胞外領域のcDNAをクローン化し、核移行型Creレコンビナーゼとの融合タンパク質の発現ベクターの構築を行ったが、Lin12、Creともにクローニングの際に大腸菌に対してある程度の毒性を示し、さらにこれらの融合遺伝子となると、突然変異を誘発することなしにクローニングすることは極めて困難であることが判明した。このため、系の構築に極めて大幅な遅れを生じた。しかしその後、この困難はCreのかわりにFLPリコンビナーゼを用いることによって回避することができた。ただし、Lin12の膜貫通領域が哺乳類細胞内でプロテアーゼ切断されにくいことが判明したので、この領域を哺乳類のNotch2と置き換える工夫をした。さらに、CreからFLPへの変更に伴って必要となる発現ベクター類の構築(FRTカセットなど)も行った。また、線虫Deltaホモログ(Lag2, Apx1)およびそれらと哺乳類Jagged1との融合タンパク質発現ベクターなどの構築も行った。以上の組換えベクター類が、哺乳動物の培養細胞系で期待される発現と活性を持つことも確認した。これらのツールを利用して、接触した細胞を遺伝的にラベルできるかどうか、また、線虫のNotch-Deltaホモログ(Lin12-Nag2, Apx1)が、哺乳動物の系と互いに干渉しないかどうかを検証する段階に到達した。
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