2011 Fiscal Year Research-status Report
重症心身障害児の母子における情動調律―母子の関係性支援の試み―
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23730657
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Research Institution | Kagawa University |
Principal Investigator |
前盛 ひとみ 香川大学, 教育学部, 講師 (30584213)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 母子関係 / 障害児の母親 / 心理的支援 |
Research Abstract |
平成23年度は、まず、重症心身障害者の母親における子どもとの関係性の変容について、これまでの研究成果を「重症心身障害者の母親の障害受容に関する臨床的理解」としてまとめ、発表した。これにより、重い障害をもつ子どもの母親の心理過程および、母親への心理的支援における課題が明確になった。加えて、平成23年度は、研究1、研究3の実証研究のための予備研究および研究2の遂行のため、香川大学医学部附属病院小児科NICUにおいて、低出生体重児や疾患・障害をもつリスクのある子どもの家族に対する心理的支援の実践を開始した。研究1、研究3では、平成24~25年度に、重症心身障害児の母子相互作用に関する観察または調査面接を用いた実証研究を行う予定であるが、平成23年度の活動は、その予備研究として位置づけられる。生命や発達のリスクを抱えた子どもと母親への直接的な参加観察を通して、母子の関係性の形成過程および関係性の障害となるリスク要因に関する仮説を生成することに寄与したものと考えられる。ここで得られた仮説をもとに、平成24~25年度に、実証研究を進めていく。また、平成23年度の活動は、心理的支援の実践を通した事例研究(研究2)にも当たるものである。平成25年度までの2年半の間に、実践を行った数事例をもとに、発達にリスクをもつ子どもとの関係性の形成を支援する具体的なあり方を考察していく予定である。これらの研究を通して、生命や発達にリスクを持って生まれてきた子どもとその母親が良好な関係性を形成・発達させていくメカニズムの一旦を解明することに寄与するものと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成23年度は、研究1を実施する予定であったが、研究1、3の予備研究を行うにとどまった。研究1の実施が困難であった要因の一つに、研究協力者を確保することができなかったことがある。本研究では、乳幼児期の重症心身障害児の母子を観察することを主たる手法としているが、対象とする母親は、障害告知後の心理的な混乱状態の最中にあり、母子の観察という研究への協力は難しい状況にある。そのため、研究手法の変更および対象を広げる必要があると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は、重症心身障害児の母子の関係性支援モデルの形成が主な目的である。また、本研究を遂行するにあたり、乳幼児期の重症心身障害児の母子の縦断的な観察を主な手法としていたが、研究対象者の置かれている心理的状況の観点から研究の倫理面を考慮すると、研究計画の変更を余儀なくされる。 そのため、今後、重症心身障害児の母子の情動調律については、乳幼児期に限らず、それ以降の年齢段階にある重症心身障害児の母子も対象とする。さらに、乳幼児期の母子の関係性形成については、観察ではなく、面接調査や質問紙調査を通して検討していくこととする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
23年度は調査の実施に至らなかったため、データ分析のための人件費に使用しなかった。そのため、平成24年度は、23年度の246,375円の繰越金を合わせた額を使用する予定である。次年度は、主に、母子関係や心理療法関連の図書の購入、データ分析のための人件費、学会や研修会への出張費、調査実施のための旅費(対象者が遠方にいる場合)のために使用する。
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Research Products
(1 results)