2012 Fiscal Year Research-status Report
重症心身障害児の母子における情動調律―母子の関係性支援の試み―
Project/Area Number |
23730657
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Research Institution | Kagawa University |
Principal Investigator |
前盛 ひとみ 香川大学, 教育学部, 講師 (30584213)
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Keywords | 臨床心理学 |
Research Abstract |
平成24年度は、前年度に引き続き、香川大学医学部附属病院NICUにおいて、低出生体重児や先天性疾患・障害のある新生児と家族に対する心理的支援の実践を行った。その中でも、低酸素虚血性脳症により生後1カ月で亡くなった新生児と家族への心理的支援の事例を、日本心理臨床学会第32回大会(平成25年8月開催予定)自主シンポジウムで発表する予定である。この事例をもとに、重大な脳障害のために反応の全くない子どもと母親との関係性が形成されるプロセスについて検討を行い、今後研究論文として発表する予定である。 また、平成24年11月よりNICUを退院した子どもの母親への面接調査を実施している。現在、低出生体重児の母親7名への面接調査を終えたところであり、平成25年5月には、低出生体重児の母親における子どもとの関係性の発達過程に関する研究論文をまとめ、『香川大学教育学部研究報告I』に投稿する予定である。NICUを退院した子どもの母親への面接調査を引き続き実施し、平成25年11月には、出生時に先天性の疾患や障害をもって生まれてきた子どもの母親における子どもとの関係性の発達過程に関する研究論文をまとめ、『香川大学教育学部研究報告II』に投稿する予定である。 なお、平成25年3月には、重症心身障害者の母親から得られたインタビューデータを再分析し、『重症心身障害者の母親におけるアイデンティティ危機の様相―4事例におけるライフストーリーの分析から―』を日本発達心理学会第24回大会で発表した。 このように、平成24年度は心理臨床実践や面接調査を実施した。これらの活動を平成25年度に研究論文としてまとめ、発表する予定である。一連の研究を通して、生命や発達にリスクを持って生まれてきた子どもとその母親が良好な関係性を形成・発達させていくメカニズムの一旦を解明することに寄与するものと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究は、重症心身障害児の母子を対象としているが、協力者の確保が困難であった。当初予測していたより、重症心身障害児の家族は、子どもが乳幼児期には心理的に混乱している状態が続いていることが明らかとなった。そのため、重症心身障害児の母子の相互作用の観察を行うという研究方法は、倫理的な問題が生じる可能性があると判断し、研究計画の変更を検討した。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では、重症心身障害児の母子を対象としていたが、倫理面の問題上、協力者の確保が困難であるため、協力者の対象を拡大することとする。具体的には、重症心身障害児の母子だけでなく、出生時に生命の危機や疾患・障害といった医学的・発達的リスクのある子ども(NICUに入院した子ども)と母親を対象とする。 平成24年度11月から研究計画を変更し、NICUを退院した子どもの母親を対象に面接調査を行っている。これらの調査結果について、「低出生体重児の母親における子どもとの関係性の発達過程」、「先天性障害児の母親における子どもとの関係性の発達過程」というテーマで論文としてまとめ、投稿する予定である。 さらに、重症心身障害児の親に対する質問紙調査を実施する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度は、主に人件費・謝金(面接調査のデータのテープおこしおよび質問紙調査のデータ分析)、旅費(学会発表、事例検討、遠隔地での調査実施)として使用する。
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Research Products
(1 results)