2013 Fiscal Year Annual Research Report
重症心身障害児の母子における情動調律―母子の関係性支援の試み―
Project/Area Number |
23730657
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Research Institution | Kagawa University |
Principal Investigator |
前盛 ひとみ 香川大学, 教育学部, 准教授 (30584213)
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Keywords | 臨床心理学 / 発達心理学 / 周産期 |
Research Abstract |
本研究は、子どもの障害や疾患など、子どもに起因する特性を要因として情緒的交流に困難さを抱える母親において、子どもとの関係性を形成するプロセスを検討するとともに、母親に対する心理的支援について考察することを目的として行われた。研究1として、しNICUに入院した経験のある低出生体重児の母親への面接調査を行い、母親意識の発達過程について検討を行った。その結果、子どものNICU入院を経験した低出生体重児の母親は、急性期には特に、子どもに関するポジティブ-ネガティブな感情の揺れ動きを体験するアンビバレントな状態にあることや、母親の経験や問題を共有する他者の存在が、母親が自分自身の経験を捉え直し、経験のポジティブな側面を見出す契機となり得ることなどが示唆された。この結果は、平成26年3月に日本発達心理学会第25回大会で学会発表を行い、同月、香川大学教育学部研究報告において報告した。研究2として、重症心身障害児の母親を対象とした質問紙調査を実施し、子どものケア役割を担うことへの母親の認識、母親アイデンティティの確立の程度、母親の精神的健康という3つの変数の関連性を検討し、重度の障害をもつ子どもの母親の独特なアイデンティティについて考察を行った。さらに、研究3として、研究者が臨床心理士の立場からNICUにおいて心理的支援を行った事例の中から、低酸素性虚血脳症の新生児と家族について事例研究を行い、重大な脳障害のために反応の全く見られない子どもと母親との関係性の発達について考察を行った。この結果は、平成25年8月に日本心理臨床学会第32回大会の自主シンポジウムにおいて発表した。以上の一連の研究を通して、医学的・発達的リスクを持って誕生した子ども及び重度の障害のある子どもと母親との関係性の発達過程のメカニズムの一端を解明し、母子に対する有効な心理的支援の方向性を見出すという一定の成果が得られた。
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Research Products
(3 results)