2013 Fiscal Year Research-status Report
樹液流により輸送される二酸化炭素の行方?気孔を介さない光合成の可能性
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24580216
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
楢本 正明 静岡大学, (連合)農学研究科(研究院), 助教 (10507635)
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Keywords | 樹液 / 二酸化炭素 / 呼吸 / 樹皮 |
Research Abstract |
高木(カラマツ)を対象に、高さ別で樹皮表面からの二酸化炭素放出速度(幹呼吸速度)の測定を行った。樹皮表面に塩ビ管を用いてチャンバーを取付け、非拡散型赤外線ガス分析計(NDIR, GMP343, VAISALA社製)を使用した閉鎖型システムで測定を行った。単位面積当たりの呼吸速度は、樹体上部では下部と比較して高く、樹液流の有無による昼夜での呼吸速度を比較すると、下部では昼間の呼吸速度が増加、上部では昼間の呼吸速度が低下する現象が確認された。樹体温度など詳細なデータが得られていないが、樹液流による 二酸化炭素輸送が呼吸速度に影響を与えていること、樹体下部と上部でその影響が異なることが示唆された。 暖温帯から温帯に生育する37樹種を対象に幹呼吸特性の測定を行った。樹皮表面に塩ビ管を用いてチャンバーを取付け、赤外線ガス分析計(IRGA, LI-820, LICOR社製)を使用した閉鎖型システムで測定を行った。測定期間は2013年8月~10月で、樹液が流れていないと思われる夜間(21:00~4:00)に測定を行った。種ごとに、皮目の大きさ、溝(裂け目)の大きさ、溝の多少、樹皮のはがれやすさから、樹皮の形態(凹凸)を4段階に区分した。また、呼吸速度のほか、外気二酸化炭素濃度と呼吸速度の関係から、CO2 コンダクタンスを求めた。呼吸速度は、0.9~9.4 micromol m-2 s-1に分布し種間で有意な差が確認されたが、樹皮形態との間に有意な相関は見られなかった。CO2 コンダクタンスは 、0.4~12.6 mmol m-2 s-1に分布し、平滑な樹皮よりも凹凸のある樹皮で高くなる傾向を示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
高木を対象とした高さ別の呼吸速度測定では、樹体温度、樹液流速度など、その他の関連要因を同時に測定することができなかったため、個体全体での評価は十分でない。しかし、複数種間を対象に呼吸速度を測定し、樹皮の形態的特性が樹皮表面からの二酸化炭素放出に影響していることを示したことは有意義である。
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Strategy for Future Research Activity |
高木を対象とした高さ別の呼吸速度測定では、合わせて樹体温度、樹体内二酸化炭素濃度、樹液流速度の測定を実施する。 ポット苗木を用いた、器官別ガス交換速度の一体的な測定により、樹液により輸送される二酸化炭素の幹呼吸速度および光合成速度への影響を評価する。また、安定同位体を用いた二酸化炭素付加実験により、樹液により供給された二酸化炭素の葉および樹皮下における光合成への貢献について検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
測定システムの構築に時間がかかったため。 測定システムの構築を進める。
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Research Products
(2 results)