研究課題/領域番号 |
04041091
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 学術調査 |
研究機関 | 慶応義塾大学 |
研究代表者 |
佐々波 楊子 慶應義塾大学, 経済学部, 教授 (30051288)
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研究分担者 |
河井 啓希 日本経済研究センター, 研究開発部, 研究員
浦田 秀次郎 早稲田大学, 社会科学部, 教授 (10185085)
馬 成三 中国亜州太平洋地区経済研究所, 副所長
桜本 光 慶應義塾大学, 商学部, 教授 (20051899)
吉岡 完治 慶應義塾大学, 産業研究所, 教授 (80051887)
菊池 純一 青山学院女子短期大学, 助教授 (80195205)
黒田 昌裕 慶應義塾大学, 商学部, 教授 (50051636)
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研究期間 (年度) |
1992 – 1994
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研究課題ステータス |
完了 (1994年度)
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配分額 *注記 |
8,000千円 (直接経費: 8,000千円)
1994年度: 3,000千円 (直接経費: 3,000千円)
1993年度: 2,500千円 (直接経費: 2,500千円)
1992年度: 2,500千円 (直接経費: 2,500千円)
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キーワード | 江蘇省 / 経済開発 / 蘇州 / 無錫 / 技術開発 / 東北地区開発 / 食品加工 / 開発波及 / 華南経済圏 / 旺盛な内需と成長 / 相互依存性 |
研究概要 |
〔はじめに〕 長江下流に位置する江蘇省は、1980年〜92年のGDP成長率は平均16.4%と全国平均の15%を上回り、1992年の1人当りGDPは全国平均よりも39%高い。江蘇省がこのような開発実績を示すようになったのは、1990年代に入り上海の浦東地区開発が、国家プロジェクトとして発足し、中国の金融・貿易センターとしての役割を担うことが明らかになったことに起因する。江蘇省は上海の後背地としての地理的条件や、中国の近代産業発祥の地としての技術水準の高さといった優れた産業基盤をもっている。このために多くの外国企業が投資先として注目するするようになる。1986年の中国への海外直接投資のうち江蘇省の占めるシェアはわずか1%にすぎなかった。しかし1992年になると、江蘇省のシェアは13.6%へと急上昇した。 江蘇省への外資導入は、交通インフラの整備が進んだ省南部に集中している。特に1995年に上海-南京間に高速道路が開通することになっているため、ルート上の蘇州、無錫、常州、鎮江には多くの経済技術開発区やハイテク産業開発区の整備が進んだ。今年度の現地企業調査対象地として選んだ蘇州と無錫は、1992年の江蘇省全体への海外直接投資のそれぞれ49.9%と16。6%のシェアを占める。 〔現地企業調査〕 現地企業としては中日合弁企業(蘇州横河電表有限公司、無錫中国華晶電子集団公司)、中・日・香港合弁企業(蘇州沙油克三光機電有限公司)、中・香港合弁企業(蘇州盛宏服飾発展有限公司)、という3つのタイプの企業を調査した。企業調査項目のうち、本研究の課題である経済開発の波及効果という点に関しての成果については以下の通りである。 直接投資の受入れ国、或いは受入れ地域への波及効果は、生産・雇用・技術・輸出・輸入など多岐にわたる。今回の現地調査では、日本企業がすでにアジアでの投資実績をもち、アジア地域全体の中で中国での生産を位置づけているケースとして、横河電表があげられ、また高度技術波及のケースとしては華晶電子が重要である。 1.アジア地域内での波及 -横河電表のケース- 親会社である横河電機はシンガポールに子会社をもち経営ノウハウを蓄積している。蘇州への合弁企業設立は、シンガポールでの賃金上昇に対応するためであった。QC活動や研修にはシンガポール子会社と連係して行っている。 2.高度技術の習得と技術波及 -華晶電子のケース- 中国の代表的な半導体生産企業である華晶電子集団(国営企業)と東芝の合弁生産は、技術的に高度なBipolar Mos生産事業を目的として、同集団の工場敷地内部で行われる。他の事業部には、生産における意識の向上や間接的な、知識の習得といった技術波及を期待することが出来る。1.及び2.が生産技術を中心とした波及効果が期待出来るケースであるとすれば、蘇州盛宏のケースでは国内需要及び国内雇用波及が期待出来る。 国内需要と国内雇用への波及 -蘇州盛宏のケース- アパレルの生産を行う個人企業であり、生産は、すべて国内需要向けである。年率10%の生産拡大は国内需要の急速な拡大を反映している。労働力は江蘇省北部のみならず、隣接の低賃金地域である安微省からも調達している。 〔今後の研究課題〕 1992年の江蘇省の輸出は、対前年増加率が34.9%と驚異的な伸びを示している。加速的な外貨流入がその一因になっていることは事実である。しかし1-3の現地調査事例が示すように、外貨のもたらす生産・雇用・技術・輸出入に及ぼす影響はきわめて多様である。従って、今後の研究課題は現地企業調査によって得たミクロ的な現状への理解を国際的な相互依存性を深める中国経済の発達モデルに組み入れて行くかである。
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