今回の研究においては基礎的な作業として、政治広告研究の現状を把握するためにアメリカの政治広告研究のレビューをおこなった。アメリカにおける政治広告研究は主として1970年代以降に発達したが、これはテレビの普及により、広く政治広告が放映されるようになり、従来の選択接触の知見が否定されるようになったためである。このことはマスコミュニケーション効果研究における強力効果の復権と対応している。 政治広告研究において研究対象となっており、かつ社会心理学的な視点からみて重要と考えられる変数群は次の3つである。(1)効果の尺度として、候補者の知名度、議題設定、候補者選好。(2)メッセージ要因として、内容がイメージ志向か争点志向か、ネガティブアピールを利用しているかどうか、また映像の構成要素(カット数、音楽の利用)、(3)受け手の要因としては関与、があげられる。 中でも最近注目をあびているのが、ネガティブアピールであり、ネガティブアピールは候補者の想起については効果があるものの、候補者選好にはあまり効果がみられていない。また、党派心の強い人、選挙について高関与の人に効果がみられることが明らかになっている。 日本において政治広告研究をおこなう場合は、まず制度的な問題として、広告の主体が候補者自身でなく政党であること、キャンペーン期間を告示から投票までと捉えるとアメリカに比べはるかに短い点が問題となると考えられ、これらの点を考慮した研究が進められる必要がある。
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