研究概要 |
1.研究実施計画の第1点である、性別、ライフスタイルによる中年期の自我同一性再構成の様相については、先行研究で特徴が明確化されていない女性に焦点を当て、面接法による検討を行なった。対象は、40代女性59名(有職群・専業主婦群)である。結果は以下の2点である(杉村,1993)。(1)次の4つの自我同一性再構成のパターンを見いだした。a.社会的役割同一性の安定→個人的同一性、b.社会的役割同一性の動揺→個人的同一性、c.社会的役割同一性の安定→その再確認と継続、d.社会的役割同一性の動揺→変化の方向が不明確。(2)パターンa・cは有職群、パターンbは専業主婦群に多いという結果から、中年期の自我同一性再構成の様相がライフスタイルによって異なること、特に専業主婦において心理的葛藤が顕在化しやすことが示された。 2.研究実施計画の第2点である、自我同一性再構成における親子関係の変化の重要度については、有職群、専業主婦群ともに40%の対象者が、自我同一性再構成の要因として、子供の成長を契機とした“子育ての再考"(Erikson,et.al,1986)を報告するという結果を得た。このことから、女性に関しては、どのライフスタイルにおいても、親子関係の変化が、中年期の自我同一性再構成の重要な要因であることが確認された。 3.自我同一性再構成を、親子関係と関連づけながら、より確実に把握するための新しい方法論を検討した。具体的には、対人関係的領域を重視し、自我同一性発達の力動的過程を把握し得る、Grotevant & Cooper(1981)の自我同一性地位面接を、わが国で初めて翻訳して修正を加え、予備面接を実施した。結果は現在分析中で、次年度は、第1に、この結果をもとにして本面接法を確立すること、第2に、本法を用いて自我同一性再構成を把握するとともに、これと親子関係の変化との関連の詳細を検討することを計画している。
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