本研究では、高校教育改革の中核をなす総合選択制高校と単位制高校に焦点を合わせて、その構造と機能について理論的・実証的な検討を加えた。 まず、総合選択制高校については、公立高校の地盤沈下という1970年代後半以降の教育変動を背景として設立された点が基本的な特徴である。これが、都市部の高校増設という行政課題と表裏をなしている。たしかに、そのかなりの部分は従来の新設校がたどりがちであった「不人気校化」という運命から逃れることに成功したし、データの再分析から生徒の学校生活への構えも格段に積極的であることが確認された。とはいえ、その効果のかなりの部分は全県学区や推薦入学制度、あるいは積極的な宣伝によってもたらされたものであった。しかも、個々の生徒は、科目選択制を大学入試に必要な最小限の科目を効率よく履修するために利用しており、「普通科と職業学科の統合」というベクトルとは異なる道筋をたどっていることがわかる。他方、単位制高校は、従来の「定時制課程」の建て直し策として位置づけられる場合が多いが、窮屈な〈学校空間〉から生徒を解き放つという点で有効に機能し、中退者の救済機構となっている。しかし、これは教師一人あたりの生徒が比較的少ないことで可能になっているものである。とはいえ、単位制高校はきわめて多様であり、個々の学校の歴史・社会的文脈もさまざまである。これらの多様性を視野に入れながら、「定時性高校」・「単位性高校」がたどってきた歴史的過程から今日の高校教育改革のあり方や社会像について理論的に整理していくことが今後の研究課題である。
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