本研究は、海洋に依存するところの大きい南太平洋フォーラム諸国の海洋環境保護をめぐる地域協力に焦点を当てて、研究を行ってきた。特にその中でも、同諸国にとってきわめて緊急の課題となっている海面上昇問題、およびその主原因である地球温暖化をはじめとする気候変化問題を中心にとりあげ検討した。 その結果、南太平洋フォーラム諸国は、自らの南太平洋フォーラムのみならず、地球環境機関の南太平洋地域環境計画(SPREP)をも、海洋環境保護をめぐる地域協力に十二分に活用してきたことが明らかになった。SPREPは、1980年に南太平洋委員会、南太平洋フォーラム事務局、国連環境計画、ESCAPの4組織によって設立され、南太平洋フォーラム加盟国ばかりでなく、統治国、非独立島嶼地域もメンバーとして含めたものである。SPREP内でコア・グループを形成する南太平洋フォーラム諸国は、SPREPを上記4組織による共同運営から自立的地域組織へとなす組織改革のイニシアチブをとり、1991年にSPREPの完全独立化を達成させた。これを契機として、SPREPは技術協力分野に加え、南太平洋フォーラム諸国が望む、海洋環境保護など地球環境問題に対する地域的アプローチの調整・推進役としての役割を強めていった。以降、南太平洋フォーラム諸国は、SPREPを通じて海洋環境保護をめぐる地域協力を積極的に展開していくことになるのである。 このように、南太平洋フォーラム諸国は、南太平洋フォーラムよりも広い範囲をメンバーとして包含する既存のSPREPを最大限活用することで、国際社会に効果的に働きかけていくことに成功したといえる。こういった南太平洋フォーラム諸国による南太平洋フォーラム以外のチャンネルにおける海洋環境保護をめぐる地域協力のさらなる事例研究に関しては、今後の課題とすることにしたい。
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