研究概要 |
当初の計画以外に、走運動による筋小胞体(SR)のCa^<2+>取込み能力の変化についても検討する必要があると考え、その準備に取組んだ。この測定に必要な特殊なCa^<2+>電極は海外のメーカー(G.Moller,Zurich)からのみしか販売されておらず、これを購入するために何度かFaxで問い合わせたが返答が得られず、このために実験は大幅に遅延した。 しかしながら、現在までに毎分30mおよび60mでehaustionに至るまで走行させたラットの外側広筋深層部についていくつかの知見が得られている。30m/minで走行させた群(R・30群)、60m/minで走行させた群(R・60群)のどちらについてもCa^<2+>ATPase活性は、コントロール群(C群)と比べ約40%(P<0.05)の低値が観察された。しかしながら、R30群とR60群との間には有意な差異はみられなかった。また、電気泳動法によりSRのタンパクを分離し、全タンパクに対するCa^<2+>ATPaseの量比を求めたところ、R30群、R60群、C群間に差異は観察されず、Ca^<2+>ATPase活性の低下はCa^<2+>ATPの量的な変化に起因しないことが示された。さらにCa^<2+>ionophore(A23187,Sigma)存在下におけるCa^<2+>ATPase活性については、3群ともに不存在下における場合と比べ上昇したが、3群間に上昇率における差異はみられなかった。したがって、SRの膜構造の変化が運動によるCa^<2+>ATPase活性の変化の原因であるとは考えられない。ここまでの結果では長時間運動(R7群)と短時間運動(R60群)により起こるCa^<2+>ATPase失活のメカニズムについて明確な違いは示されなかった。現在、ATPaseタンパクの化学的修飾の有無について検討中である。
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