評定尺度法によるアンケートの結果を分析する場合には、単に質問項目に対する平均評定値や分散などの統計量を計算するだけではなく、質問項目の関連構造を分析する構造分析法を用いることが有効である。さて、アンケートを実施する場合、被験者に評定値を1つだけ選択(定点評価)させることが多いが、被験者にとって評定値を1つだけ選択することは困難な場合がある。そこで、新しい評定方法として評定尺度上のある範囲を指定させる(例えば、領域を囲むなど)方法(ファジィ評定)が考えられる。このとき得られるデータをファジィ評定データと呼ぶ。そこで、本研究では、まず第1にこのファジィ評定データに構造分析法FSA(Structural Analsis for Fuzzy Rating Scale Data)の理論を完成させた。また、アンケート調査に用いるデータには、(1)評定値が高いほど評価が高い評定尺度データ、(2)評定値の中央値が最も評価が高い評定尺度データ、(3)評定値に特別の意味のない名義尺度データ、の3種類がある。本研究では、これらの3種類のデータ全ての場合に対応できるFSAを開発した。第2に、パーソナルコンピュータ上で作動する、FSAの分析システムをインターフェースも含めて開発した。第3に、研究業績にも示したように、教育における様々な局面にFSAを用いて教育評価へのFSAの応用の可能性を検証した。その結果、従来のアンケート調査の結果からは得られなかった結果、例えば、被験者集団の意識構造、興味・関心の要因など、をうまく抽出・分析できるとの知見を得た。さらに、被験者に定点評定とファジィ評定の両者を許可した場合約70%の被験者がファジィ評定を用いていることから、経験的ではあるが、被験者の評定値選択に関してはかなりのあいまい性を含んでいるとの知見も得た。以上、本研究での当初の目的である、FSAの理論の完結、分析システムの開発、教育評価における有効性の検証を予定通り、進めることができた。その結果、アンケート調査においては、被験者は評定値選択に際してあいまい性をもっており、FSAはそのあいまい性を評定値として積極的に取り入れることによって、非常に有効な手法であるとの結論を得た。
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