研究概要 |
申請者らはこれまでの研究から、種々のヒト癌細胞株をγ型インターフェロンで処理すると、MHCクラスII遺伝子クラスター内にコードされたプロテアソームのサブユニットLMP2,LMP7の発現が転写・翻訳レベルで著しく高まると同時に、新たにサブユニットX,Yと名付けたプロテアソームの遺伝子産物がほぼ完全に消失することを明らかにしてきた。平成6年度はこれらのサブユニットX,Yをヒト腎臓から精製したプロテアソームから二次元電気泳動分析によって分離することに成功し、部分アミノ酸配列を決定した。この情報をもとにX,YのcDNAのクローニングを行い、その一次構造と遺伝子の発現機構を解析したところ、XはLMP7とYはLMP2と60%を越す高いホモロジーを有することが判明した。また、新たにX,Yと同様にγ型インターフェロンによって変化するZ,MECL1というサブユニットを発見し、その一次構造と遺伝子の発現機構を解明した。これらのことや以前に報告したγ型インターフェロンによるプロテアソームの酵素活性の変化よりプロテアソームはγ型インターフェロンによりその構成サブユニットであるX,Y,ZをLMP7,LMP2,MECL1に入れ替え、抗原提示に有利なペプチドを効率よく産生する事が出来る構造に変化すると考えられた。 また、一方、20Sプロテアソームは精製すると不活性型であり、活性化因子の存在が以前より想定されていた。その20Sプロテアソームを活性化するヘテロダイマー(PA28α、PA28β)の精製に平成6年末に成功し、平成7年度にはそのcDNAのクローニング、一次構造の決定を行った。さらにその情報をもとに遺伝子工学的手法を用いてそれぞれの蛋白の合成を行い、プロテアソーム活性化に対する機能解析を行った。 今後はこれらの知見ともとに様々な臨床症例においてそれぞれの発現と腫瘍の進行に関して検討していく予定である。
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