研究概要 |
本研究では、実際に養護学校で行われている体育授業に関して、学習者の主体的な課題解決のために、指導者がどのような意識を持ち、どのような援助方略を用いているのか明らかにすることであった。この分析をもとにGibson(1975)の生態学的アプローチ理論を基盤とした障害を持つ子ども個々の特性が考慮できる指導プログラムの作成を行うことをも計画した。 まずはじめに、兵庫県下の精神薄弱養護学校に勤務する教員104名を対象に、(1)現在行われている体育授業について、(2)障害児の体育授業観の2つの側面からアンケート調査を実施した。その結果、ほとんどの精神薄弱養護学校の小、中、高等部の体育の授業には、教員免許の種類に関係なく対象となった教員すべてが関わっていることが明らかとなった。しかしその指導カリキュラム内容は、運動会、マラソン大会などの行事を忠心に年間計画として固定化していることが多く、他の授業に比較して負担と感じている教員が少なくなかった。 教員の障害児の体育授業観について12項目からなるアンケートを因子分析した結果、次のようなカテゴリーに分類された。(1)精神力重視型:体育の中でやる気や集団の中での努力を重視するタイプ、(2)体育不必要型:専門的な体育指導や運動評価よりも別の教科の授業時間を増やすというタイプ、(3)統合体育型:訓練的な体育ではなく、音楽やゲームなどと統合させた体育が望ましいというタイプ、(4)専門性重視型:体育は専門教師が指導に当たるべきと考え、また自分も積極的に講習会やワークショップに参加しようと考えているタイプ これまで精神遅滞児の運動指導の場合では、本アンケートにもあるように運動能力のなかでも体力の低さが焦点化され、それを補償するために集中的なトレーニングを行う必要性がよく説かれてきた。そのため教育実践場面では、体育での単元課題そのもの選択に重点が置かれ、「どのように」学習者が学んだのかよりも、「なにを」体育で取り上げたのかが、重視される傾向にあることが明らかとなった。生態学的アプローチ(Gibson,1975)では、運動や身体活動においても学習者の内的な探索的学習過程が重要視が強調されている。今後は、このような観点から養護学校での体育指導プログラムが構成される必要性が示唆された。
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