本研究では、我々が新たに見いだした急性前骨髄球性白血病に特異的に認められる15;17転座の17番染色体側切断点集中領域ERR(レチノイン酸受容体α遺伝子内)を用いたin vitro transfection法によるERRのDNA再構成活性の検討を行った。その結果、NIH3T3細胞ではERRが他の領域と比較してDNA再構成活性が高いことがあきらかとなった。また、DNA再構成部位が48塩基対のERR領域内のさらに20塩基対内に収束することも明らかとなった。次いでERRを用いたゲルシフト法によるERR特異的結合蛋白質の検討を行ったところ、in vitro transfection法に用いたNIH3T3細胞にはERR特異的結合蛋白質が存在することが明らかとなった。また、この蛋白質はNIH3T3細胞では増殖期より増殖停止期においてより多く発現されていることも明らかとした。NIH3T3細胞以外にヒト白血病細胞株においてERR特異的結合蛋白質の有無を検討したところ、急性リンパ性白血病由来細胞株の一部において同蛋白質の存在が確認された。また、マウスの脳、胸腺、脾臓、肝臓、精巣各組織での検討では、脳組織におけるERR特異的結合蛋白質の存在が確認された。これらのERR特異的結合蛋白質は電気泳動パターンより複数存在することが示唆され、現在種々の細胞株を用いて更に詳細な検討を行っている。また同時にERRのDNA結合蛋白質との結合に必須な部位をメチレーション阻害法を用いて検討している。
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