研究課題/領域番号 |
07640482
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研究種目 |
一般研究(C)
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配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
固体物性Ⅱ(磁性・金属・低温)
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
前野 悦輝 広島大学, 理学部, 助教授 (80181600)
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研究分担者 |
中村 文彦 広島大学, 理学部, 助手 (40231477)
鈴木 孝至 広島大学, 理学部, 講師 (00192617)
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研究期間 (年度) |
1995
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研究課題ステータス |
完了 (1995年度)
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配分額 *注記 |
2,100千円 (直接経費: 2,100千円)
1995年度: 2,100千円 (直接経費: 2,100千円)
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キーワード | 酸化物超伝導体 / フェルミ液体 / 層状酸化物 / ルテニウム酸化物 |
研究概要 |
層状酸化物Sr_2RuO_4は、一昨年、我々がその超伝導性(臨界温度1K)を発見した物質で、銅酸化物高温超伝導体と同じ結晶構造をもちながら銅元素を含まない超伝導体として、これまでに知られている唯一の例である。本研究では、以下のとおり、その常伝導相ならびに超伝導相の性質を異方性まで含めて定量化し、その極めて異方的なフェルミ液体状態の特質を明らかにした。 1.単結晶試料の磁化率および比熱から、ウィルソン比は1.9と大きな値で、強い電子相関の効果を反映している。 2.常伝導相の電気抵抗率は面内、面間とも低温では温度Tの2乗に比例する項が支配的となる。Kadowaki-Woodsの比(T^2係数Aと電子比熱係数γの2乗の比A/γ^2)から、基本的に2次元的なフェルミ液体状態が形成されていること、また25K以下ではその状態が面間方向にもコヒーレントに結合することを明らかにした。 3.常伝導相の面間伝導は、およそ130Kを境にして、低温での金属伝導から高温での非金属伝導へのクロスオーバーを示す。これについてはフェルミ液体を形成する準粒子のフェルミ速度の面間方向の成分の分布が、熱的フォノンとの散乱によってドゥル-デ的(金属的)な描像を失い、熱的なホッピングに変わるためと理解できた。 4.上部臨界磁場の測定から、超伝導パラメターを定量的に決定した。コヒーレンスの長さの異方性は、対応する銅酸化物高温超伝導体よりもかなり大きい。しかしながら面間方向のコヒーレンスの長さは約40AでRuO_2面間距離6.4Aより長く、異方的ながらも3次元的な超伝導状態となっており、2次元的な銅酸化物との違いが明確になった。 以上の結果、Sr_2RuO_4は銅酸化物高温超伝導体に対する有用な比較対象としてはもちろん、これまでに例のないような極めて異方的なフェルミ液体としてこの系固有の重要性をもつことが認識できた。
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