研究概要 |
第2言語(外国語)学習者における単語の記憶過程を解明するため,2つの実験を行った。以下に,それぞれの実験研究の成果を述べる。 【実験1】 第2言語の習熟度が第1言語よりも低い第2言語学習者において,翻訳生成効果はみられるか,またこの効果の規定要因は何かを検討した。実験では,第2言語の習熟度による差を設けて,偶発または意図的学習事態の下で,日本語単語(具象単語)に対応する英語単語の読みと生成を行わせた。その結果,中級でも上級でも偶発学習でのみ翻訳生成効果がみられ,この効果の規定要因が習熟度やその均衡性ではなく,記憶の意図性であることが明らかとなった。この結果については,日本教育心理学会第37回総会(平成7年9月:茨城大学)にて口頭発表し,さらに教育心理学研究に学術論文として投稿中である。 【実験2】 第2言語の単語記憶において聴覚的イメージは視覚的イメージと同様の役割を果すのか,また両イメージの併用はどの程度有効かを検討した。実験では,中級の学習者を被験者とし,日本語と英語の単語を符号化させる際に,イメージ教示によって聴覚的・視覚的イメージを形成させた。自由再生テストの結果,日本語では両イメージの併用が最も有効であり,英語ではそれと視覚的イメージの利用が同程度に有効であることがわかった。2つの言語間では,単語記憶に果す聴覚的イメージの役割が異なることが明らかとなった。この結果については,中国四国心理学会第51回大会(平成7年11月:高知大学)にて口頭発表した。 2つの実験結果は,第2言語学習者の単語の記憶過程,特に符号化過程において,バイリンガル二重符号化理論が仮定するイメージ表象システムの機能の仕方が,第1言語と第2言語では異なることを示唆するものである。これについては継続して実験を行っており,準備ができ次第学術論文として投稿する予定である。
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