本研究ではまず大気中のラジカル類の吸光光度法による定量として、まずオゾンの超長光路吸光測定を行った。YAGレーザーから波長266nmの第4高調波と532nmの第2高調波の2つの波長の光を向かいの建物の屋上に設置したリトロリフレクターに向けて発射し、戻ってきた光をフォトダイオードで検出した。発射した光からの反射してきた光の遅れ時間から光路長は580mと計算された。オゾンは波長200〜300nmで強い吸収を示し吸光係数は10^<-19>〜10^<-17>cm^2molecule^<-1>(base e)であるのに対して、可視域ではほとんど吸収を示さない。そこで先ほどの266nmの第4高調波の減衰をオゾンによる吸収と大気中の微粒子などによる散乱、532nmの第2高調波を大気中の微粒子などによる散乱の影響のみと考え、光路長580m、266nmでのオゾンの吸光係数を9.1×10^<-18>cm^2 molecule^<-1>(base e)としてオゾン濃度を計算した。また、同時に市販のオゾンモニターによる連続観測も行い結果を比較した。測定システムはコンピューターで測定できるようにし、オゾンモニターからのデータも自動的に光磁気ディスク上に保存し比較できるようにした。その結果、オゾンモニターが示したオゾン濃度とレーザーを用いた長光路吸収によって求めたオゾン濃度はおよそ一致したが、長光路吸収法では得られた値が大きくばらつくことがあり、これはYAGレーザーからの波長266nmの第4高調波の出力の不安定さが原因であることがわかった。現在、次のステップとし、光不安定化学種の測定の予備実験として、光照射開始直後からの吸光度の変化を時間的に追跡し、その時間依存性から光照射直後の吸光度を推定し定量する方法について検討している。
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