研究概要 |
遺伝的に異なる2系統のクローンギンブナ(以下クローンIおよびII)および通常の2倍体の交配によるギンブナ(以下コントロール)子孫を以下の実験に用いた。あらかじめ体長をそろえたクローンI,クローンIIおよびコントロールの幼魚各20尾を50mlの容器で個別飼育した。給餌はすべての個体について同じになるように1日3回配合飼料を投与した。試験機関は50日間で,飼育終了時にすべての個体をとりあげ生物学的性状および生化学的分析に供した。 その結果,成長の良否はクローンI>コントロール>クローンIIの順となったが,クローンIおよびクローンIIの体長や体重の変動係数は対照としたコントロールのそれより明らかに縮小した。このような傾向は肥満度や比肝重量にも認められた。さらに各群の体成分を比較したところ,クローンIおよびクローンIIの水分含量,脂質含量,脂質クラス組成ならびに脂肪酸組成のバラツキはコントロールのそれらより明らかに縮小した。また,成長の良かったクローンIのタンパク質合成能(RNA/DNA)は高く,分解能(酸性プロテアーゼ活性)が低かったが,成長の停滞したクローンIIのタンパク質合成能は低く,分解能は高かった。以上の結果より,クローンは成長変異のみならず魚体成分の個体間変動も低下することから,栄養生理学への実験魚としての有用性が立証された。また,ギンブナ幼魚期の成長は,タンパク質の合成能と分解能とのバランスによってコントロールされていることが明らかになった。したがって,これらの生化学的性状を分析することにより,成長の優れた系統を検索できる可能性が示唆された。
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