研究概要 |
本研究ではアニオン性の蛍光色素であるcalceinを唾液腺腺房細胞に取り込ませ,Ca^<2+>依存性の水分泌に関連したアニオン性物質の分泌動態の観察を可能にすることにより,以下の結果を得た。 1.ラット顎下腺分離腺房細胞を用いた実験により,腺房細胞内に負荷したcalceinはムスカリン性刺激及びα-アドレナリン性刺激により細胞内Ca^<2+>濃度上昇とCa^<2+>依存性K^+チャネルの活性化を介し細胞内に放出されることが明らかとなった。 2.摘出ラット顎下腺の潅流実験において細胞内に負荷したcalceinは腺腔側及び基底膜側の二方向に分泌され,無刺激時に細胞内calceinは一定の割合で基底膜側に放出されており,ムスカリン性刺激は腺腔側へのcalcein分泌を促進した。 3.基底膜側への自発的なcalcein放出は細胞を脱分極させると減少し,Cl^-チャネル阻害剤により抑制されることより,calceinはアニオンとしてチャネル通して放出されると考えられたが,水分泌刺激時には若干の増加傾向がみられた。 4.腺腔側へのcalcein放出は細胞内のCa^<2+>プールからの遊離による細胞内Ca^<2+>濃度上昇とCa^<2+>依存性K^+チャネルの活性化に伴い,ある種のチャネルの活性化により水分泌の初期相と関連し引き起こされると考えられ,共焦点レーザー顕微鏡を用いた観察により細胞内calceinの細胞外への分泌現象の可視化が可能となった。 以上より,唾液腺腺房細胞内に負荷したカルセインにより,Ca^<2+>依存性の水分泌時におけるアニオン分泌が腺腔側及び基底膜側へ二方向性に分泌調節されることが観察され,細胞内Ca^<2+>濃度上昇とCa^<2+>依存性K^+チャネル及びCl^-チャネルの活性化とともに,水分泌調節に関与することが示唆された。
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