研究概要 |
判別関数の頑健性に関する研究として,エリプティカル分布における線形判別関数の性能と頑健性について研究してきた.頑健性については,これまで,初期標本中のはずれ値に対して頑健な判別方式を得るため,未知母数をM-推定量によって推定することを検討し,最適なM-最適量を得るために推定関数が持つべき性質を明らかにした.現在提案している,最適なM-推定量の構成方法は,仮定された母集合に対して最適な判別関数のプラグ・イン ルールの,初期標本が与えられたときの条件つき誤判別関数を基にしたものである.分散共分散行列が等しいエリプティカル母集合に対しては,フィッシャーの線形判別関数が最適であり,プラグ・イン ルールの条件つき誤判別確率も分布関数を使って表現できるので,構成方法が適用できる.分散共分散行列が異なる場合には,条件つき誤判別確率が複雑になるため構成方法は適用できない.そこで,分散共分散行列が異なるエリプティカル母集合に対して,線形判別関数のみを考えたときの最適な判別関数を選び,そのプラグ・イン ルールの頑健化を考えることとした.最良線形判別関数は,Anderson and Bahadurが,分散共分散行列が異なる正規母集団に対する最適な線形判別関数として導出したものであるが,そのプラグ・インルールの性能は,まだ,研究されていなかった.平成7年度以降の研究目標として,最良線形判別関数のプラグ・イン ルールの性能とその頑健化を考えていたが,今年度は,次のような結果を得た.(1)標本平均と標本分散行列を用いた,最良線形判別関数の誤判別確率の漸近展開.(2)上記誤判別確率の2次オーダー不偏推定量の構築.(3)上記判別関数について,一方の誤判別確率の値を標本数の逆数について2次オーダーまで指定する方法を考案.(4)ベイズ ルールのプラグ・イン ルールの改良.
|