研究概要 |
ヒトの筋の力学モデルは基本的には収縮要素と直列弾性要素の2要素モデルで近似でき,収縮要素には弾性要素とともに粘性要素も含まれている.かたい植物を噛む際には食物を破砕するために大きな張力を発生し筋がかたくなると言われている。また,柔らかい食物を噛むときには大きな張力を発生する必要がなく,急速な閉口運動もないため筋はやわらかいままであると考えられる.このような筋の特性に着目し,非線形な粘弾性特性を有するアクチュエータを開発することを目指した. 実機の構築:「<」形をした実機を製作した.粘性要素に相当するロータリーダンパの回転軸を,弾性要素に相当するねじりコイルばねの中心軸とし,それらを「<」形に配置した2枚のジュラルミン板の交差部分に配置した.この機構はねじりコイルばねの中心とねじりコイルばねの両端を接続したワイヤとを左右に直流モータで引っ張る機構であり,ばねダンパ機構は自重や摩擦の影響を考慮して直動リニアガイドの上に搭載した.ねじりコイルばねは筋の弾性要素に,ロータリーダンパは粘性要素に,直流モータは収縮要素にそれぞれ対応する関係となっている.ねじりコイルばねとロータリーダンパは回転方向に関して線形な特性を理論上有しているため,これらの力発生方向をワイヤを用いた機構で直線方向に変換することにより,非線形性が得られることになる. 基礎特性実験:製作した本機構の力-変位-速度特性を調べた結果,変位が増大するにつれて弾性係数・粘性係数ともに増大し,開発したアクチュエータが非線形な粘弾性特性を有していることを実験的に確認した. 以上により,咀嚼ロボット用非線形粘弾性アクチュエータを開発した.
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