研究課題/領域番号 |
08710309
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研究種目 |
奨励研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
中国語・中国文学
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
清水 賢一郎 北海道大学, 言語文化部, 助教授 (90262097)
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研究期間 (年度) |
1996
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研究課題ステータス |
完了 (1996年度)
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配分額 *注記 |
1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
1996年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
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キーワード | 胡適 / 工読互助団 / 中華民国 / 北京 / 読書 / 読者層 / 国民国家 / 恋愛 |
研究概要 |
胡適〓案資料(中国社会科学院近代史研究所所蔵)の複製(影印版)『胡適遺稿及秘蔵書信』を主な対象として、さらに上海の日刊紙『時事新報』の副刊『学燈』、北京『京報』紙を調査することにより、工読互助団と胡適との関わりについて分析を行った。この作業により、従来ほとんど未解明であった胡適と工読互助団との具体的な関わり、及び工読互助団に参加した団員の実際生活の細部がかなり明快に浮かび上がってきた。とりわけ、団の内部における男女関係=自由恋愛の実態が大きくクローズアップされ、それと胡適の思想(特にイプセン主義)とが緊密に結びついていたことが明らかになった。工読互助団については従来、政治思想史の側面から、特に共産党中心史観に立って、いわばその後の共産党の路線形成における反面教師として、これを否定的に位置づけるものがほとんどであったが、これに対し本研究では、新たに公刊された〓案資料を駆使することで、当事の実際の参加者=学生層の視点に可能な限り近づき、団の実相を、従来に比してずっと鮮明に浮き彫りにすることができたと確信している。これはまた、上からの政治史的裁断ではなく、いわば下からの、等身大の「社会文化史」的アプローチを採用した本研究の有効性を示すものと評価できよう。 また、工読互助団という、共同生活を営みながら書物を読み/書きする一つの共同体において、中国における近代的国民国家の創出をめざす宣言文とも評される胡適の「イプセン主義」が深い影響を与えていたことは、読者組織(文学結社、読書サークル等)と国民国家形成の問題系を考えていく上で重要な示唆を含んでいる。今後これを一つのケーススタディとして、読書行為をめぐるより広汎な視座から、近代中国の国民国家形成過程における〈個と共同性〉の聯関とその思想的位置づけについて考察を進めることが課題として確認された。
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