研究概要 |
骨再生誘導法(GBR)は骨再生に有用な術式ではあるが,その達成に時間がかかることから,広く臨床応用されるには至っていない.最近,コラーゲンペレットから塩基性線維芽細胞成長因子(b-FGF)を徐放させることでウサギ骨折モデルにおいて骨治癒を促進する効果があることが報告された.このことは,b-FGFは骨再生を促進する可能性を示唆している.そこで本研究では,b-FGF投与によりGBRの骨再生速度を速めることが可能かどうかを明らかにする目的で検討を行ない次の結果を得た.(1)実験動物であるイヌに関して,b-FGFに対する生体応答を検討するため,イヌ由来成長軟骨細胞の初代培養系を確立しb-FGF投与の影響を細胞レベルで検討した結果,細胞応答は,ウサギとほぼ同じであった.(2)イヌ顎骨欠損モデルを用い,GBRによる骨再生速度増加にb-FGFが有効に働くかどうかについて検討した。FGFの投与方法は,ウサギ骨折モデルに有効であったコラーゲンペレットによる徐放性局所投与を用いた.成犬9頭を用い下顎左右第3小臼歯を抜去した後の無歯顎部に骨欠損を形成し,(1)FGF群(0.15μgb-FGFを含むコラーゲンペレットを埋入),(2)placebo群(b-FGFを含まないペレットを埋入),(3)control群(非埋入)に分け,Gore-Tex膜により覆い,粘膜にて被覆縫合した.術後8週で屠殺し,組織学的観察,免疫組織化学的観察とともに,形態計測学的検討を行った.b-FGF群において,膜内の骨欠損部は大部分が成熟した骨組織により満たされていたが,他の2群では,僅かにしか成熟骨組織を認めなかった.また,形態計測により,膜内の再生骨量はFGF群が他の2群より有意に高いことが明らかとなった.以上の結果から,骨欠損部に膜を用いその内部にb-FGFを徐放できるコラーゲンペレットを用いることで骨再生を促進できることが示され,GBRの治癒期間を短縮できる可能性が示唆された.
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