研究概要 |
本年度は主として1998年7月におこなわれた参議院議員選挙の政党広告について研究をおこなった。今回の参議員選挙では,政党のメディア・キャンペーンは盛んであったが,ポジティブなキャンペーンが多くを占め,ネガティブ・キャンペーンはほとんどおこなわれなかった。新聞には告示以前の6月初旬から出稿が継続的になされたが,1996年の総選挙で自民党が試みたような明示的なネガティブ・キャンペーンはおこなわれず,ネガディブな点が強調されたのは,民主党が投票日の2日前におこなった「橋龍政権でこうなる」と「民主党政権ここが変わった」という比較広告のみであった。 これらの政党広告について大学生を対象としたフォーカス・グループインタビューを試みた。民主党がおこなった比較広告については,相手を非難している点については,特に抵抗もなく,また政治参加への抑制をもたらすことはないようだった。ただ,週刊誌の体裁をとっていること自体が広告の信頼性を低める可能性があること,つまり嘘っぽさ,やぼったさが強調され,それがさらに政党の主張ということで増幅される危険性が指摘された。一方,よく読めば分かるとの評価もあった。また他の政党を含め,広告として見た場合についての評価について質問したところ,自由党の広告が高い評価を得ていた。次いで,自民党,民主党という順であった。 若者の政治離れという指摘は常にあるが,今回の参議院選挙に限るならばネガティブ・キャンペーンがそれを加速したということはない。ただ,キャンペーンにさらに工夫をしないと,通常の商品広告に親しんでいる若者を政治に引きつけることもまた難しいのである。
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