研究概要 |
歯を失った患者の飛躍的なQOL向上を目指し,良好な機能や優れた審美性を回復できる治療法として,インプラント治療が広く行われる様になってきた。しかし,顎骨が高度に吸収した患者においては,インプラントの適応も困難となることが多く,残存顎堤の幅および高さを増すための骨造成に高い関心が集まっている。そこで,異所性に骨を誘導できる成長因子として注目され骨芽細胞誘導因子(BMP)と,骨造成を促進する線維芽細胞増殖因子(FGF)を組み合わせて骨造成材料とすることにより,極めて短期間での骨造成が可能になると着想し,本研究では,これまでin vivoでのみ検討されてきた骨形成と各種成長因子との関係をin vitroで検討していくための新しい動物実験方法の確立と,各種成長因子の最適な投与量および投与方法の合理性を明らかにすることを目的とした。 本年度は,昨年度確立した動物実験モデルを用いて,ラット下顎骨骨体部にBMPを含む同種脱灰骨を填入した材料埋入用フレームを埋入,FGFを注射器にて0.001μg,0.01μg,0.1μgをフレーム周囲に投与し,組織学的,組織計測学的検討を行ったところ,FGFの投与量による骨形成に対するあきらかな差は認められなかった。 頭頂骨にてFGF含有のコラーゲンミニペレットを組み合わせた骨造成モデルではFGFの投与量による骨形成に対する差が認められたこと(平成8年度奨励研究(A),課題番号08771786),注射投与による膜破壊が数例認められたことから,FGFにおいては,投与法によって骨造成能が異なることが示唆され,短期間での骨造成達成のための有益な知見を集積することができた。
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