研究概要 |
1.アメリカの教育現代化期の地誌教育改革論を,ミネソタ大学が開発した『プロジェクト社会科』を手がかりに解明した。研究の結果,同プログラムは,事実のネットワーク化を通して子どもなりの地域像を形成させる「理解」の過程と,解釈された地域区分を,事実に照らして「説明」させる過程の,2段階から内容編成されていること,これは地誌教育に内在する価値注入あるいは世界観の統制の問題を軽減し,科学的な手続きに基づいて地域の特色をつかませる上で意義あることが明らかとなった。本研究の成果は,『教育学研究紀要』第45号(中国四国教育学会)に投稿し、掲載された。 2.アメリカの教育人間化期の地誌教育改革論を,バー・スティーグらが開発した『世界文化』を手がかりに解明した。研究の結果,同プログラムには,人間の行動様式の機能および構造-変動を捉える社会学の一般概念を 探求させる単元構成と,同概念を理論的枠組みにして行動様式の差異を説明し,差異を生み出している地域固有の価値体系を分析させる授業過程の,2つの論理が組み込まれていること,これは子どもをエスノセントリズムに陥らせることなく,文化の普遍性と多様性を認識させる上で意義あることが明らかとなった。本研究の成果は,平成11年度社会系教科教育学会研究大会において発表した。 3.地理教育における社会問題研究の論理を,ヒルらの開発による『GIGI』と,アンドリュー編纂の『都市研究』を 手がかりに析出した。研究の結果,社会問題研究として地理には,(1)国家横断的な社会問題に焦点を当て,世界規模でみた問題の趨勢(地域格差)と,国家・地方スケールでみた問題発生の原因を探求させる「グローバル問題研究」と,(2)身近な都市問題を取り上げ,行政官の立場から問題の現状を把握し,都市の空間的配置の変更案をプランニングさせる「ローカル問題研究」の,2つの考え方があることが明らかとなった。研究成果は,『兵庫教育大学研究紀要』第20巻に投稿し,掲載された。
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