研究概要 |
1,1-ビスヒドロペルオキシドと1,n-ジヨードアルカンとの求核置換反応で得られる新規中員環過酸化物1,2,4,5-テトラオキサシクロアルカンは、極めて高い抗マラリア特性を示す。本年度は、その合成法改良を試みるとともに、得られた過酸化物の抗マラリア特性を検討し、構造と活性との関係を明らかにすることを研究の目的とした。 その成果をまとめると以下の通りである。 (i)1,2,4,5-テトラオキサシクロアルカン合成法の改良:1,2,4,5-テトロキソカンの工業的生産に適した合成方法として、酢酸エチル中での酸化銀をメディエータとする反応で、目的とする環状過酸化物が約60%の収率で得られることを今回新たに見い出した。 (ii)抗マラリア特性の評価:合成した過酸化物のいくつかは、10^<-8>Mの濃度でマラリア原虫に効果的に作用するとともに、その選択毒性は100倍以上と極めて高い事を明らかにした。ついで、in vitroでの活性の高いものについてin vivoでの検討を行った。その結果、例えば1,2,6,7-tetraoxaspiro[7.11]nonadecaneの特徴として;(1)毒性が極めて低い、(2)クロロキン耐性株K1に対しても効果的に働く、(3)燃性が低い、(4)経口投与での効果が高いことが明らかにされている。(3)、(4)に記した特徴が、実用化されている天然抗マラリア剤アルテミシニンを凌駕する事は注目に値する。
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