研究概要 |
ドーパミン輸送蛋白(DAT)遺伝子の多型とパーキンソン病(PD)の発症が相関しているかを検討する目的で,この遺伝子の全coding領域の多型を検索し,PDと正常対照での頻度を比較した。孤発性PD患者172名と正常対照132名を対象にした。全ての検体は日本人で十分な説明を行い,同意を得た。多型の同定には1)直接塩基配列決定法によるPD患者24名の解析,2)一本鎖DNA高次構造多型で正常対照24検体を用いた。多型の頻度はdot blot hybridizationにより解析した。 DAT遺伝子の内,exon1を除いた14のexonを解析し,直接塩基配列決定法と一本鎖DNA高次構造多型でそれぞれ2つの多型を同定した。配列の解析結果より,これらはともに同じものであった。多型はexon9と15に存在し,exon9の1215番目の塩基がA→G(1215A/G)になり,exon15では1898番目の塩基がT→C(1898T/C)に変わっていた。前者は403番目のセリン残基の3番目のコドンにあたり,後者は非翻訳領域に存在するためアミノ酸配列への影響はなかった。 両者のdot blot hybridizationを行い,PD群と正常群での頻度を比較した結果,1215GはPD群で有意に少なかった。一方,1898CもPDで少なかったが,有意差はみられなかった。また,この2つの多型は両群で連鎖不平衡の状態にあった。 この結果は1215GがPDになりにくいことに相関していることが示された。1215GがPDの発症に関係する機序として1215Gが近傍に存在する他の多型ー特にプロモーター領域の多型とリンクして,DATのmRNA発現レベルに影響する可能性がある。このことからこの遺伝子多型がPDの発症に関与していることが示唆された。
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