研究概要 |
ストレス状況では,ストレスを低減するための試みとして対処を行う。対処方略には,ストレス状況に対して具体的な対応を試みる問題焦点型対処と,高まった情動の低減を試みる情動焦点型対処とがある。対処方略の有効性は,ストレス状況の制御可能性に依存しており,制御可能性の高い状況では問題焦点型対処が有効であり,制御不可能状況では情動焦点型対処が有効であるといわれている。このことから,状況に応じて採用する対処方略を柔軟に変えることが,ストレス低減には重要だと考えられる。 本研究は,対処方略採用の柔軟性と固執がストレス反応に及ぼす影響について検討したものである。研究は,(1)対処の柔軟性とストレスとの関連,(2)制御欲求と対処の固執およびストレスとの関連,(3)対処の固執を誘発する社会的要因の検討,の3部から構成されている。得られた結果をまとめると以下の通りである。 (1)対処方略採用の柔軟性は,ストレス低減に有効で,不適切な対処方略の採用がストレスを高めていることがわかった。 (2)ストレス状況の制御可能性が低下しても,制御欲求が高いと問題焦点型対処の採用に固執し,それが高いストレスにつながっていた。 (3)対処の柔軟な採用を阻害する社会的要因として,他者からの期待と責任性の検討を行った。他者からの期待はストレスの増加と仕事満足の低下と関連していた。責任の高い状況では精神的な負荷が高くなること,特にタイプA者は高い自律神経活性を示すことがわかった。 以上の結果より,対処の柔軟な採用が阻害されると高いストレスを生じることになる。
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