研究概要 |
近年,栄養塩あるいは浮遊物質を含む農用地からの排水を一時的に溜池などに貯留し,物理的,あるいは生化学的作用により浄化を行う試みがある.これらの浄化のメカニズムや浄化能力は定性的には理解されているものの,定量的には未だ十分に把握されていないのが現状である.本研究では,これら浄化のメカニズムを明らかにし,その浄化能力を定量的に評価する試みを実施した. 2000年から2001年にわたり,滋賀県水口町にある東池で窒素,リン,クロロフィルa等を測定してきた.結果,東池に流入したリンは11.9kgであり,そのうち約50%が残留,窒素は37.61kgが流入し,約7.5%が残留していることが分かった.また,リンが灌漑期,非灌漑期を通じて残留するのに比べて,窒素は溜池内濃度が高くなる施肥直後以外はあまり残留しない傾向が見られた.他の溜池における栄養塩残留特性の研究結果に比べて,東池はやや大きめの値が出ているが,これは東池の水の滞留時間が比較的長いことと,農業用排水を一時的に貯留することで,溜池内の栄養塩濃度が高くなる時期が存在することなどによるものだと考察された. 本結果は.一例に過ぎないが,全国にある溜池数を考慮した場合,その栄養塩除去効果の全体量はかなり大きなものになると考えられる. その他に,同地域の溜池の特徴を調べるために,踏査およびアンケート調査を行った.その結果,溜池は規模と立地条件,管理,地域性などのクラスター条件で大きく4つに分類出来ることが明らかとなった. さらに,溜池の積極的な浄化能向上を目指して,貝類の導入と落水による効果についても検討を行った.貝類はプランクトンを捕食する一方で,プランクトンが利用しやすい栄養塩の排泄も行っており,単純に大きな効果があるとは断定できなかった.また,落水についても有機物分解への効果は認められたものの,栄養塩溶脱抑止に効果があったかまでは判定できなかった.
|