研究概要 |
本研究では,持久性トレーニングおよび一過性の運動が骨格筋筋子胞体(SR)の機能に及ぼす影響を検討することを目的とした.Wistar系雄性ラットをコントロール(C)群とトレーニング(T)群とに分け,T群には持久性トレーニングを10週間行わせた.トレーニング終了後,各々の群を運動を行わない非運動群(N)群と一過性の運動を行う運動(E)群とに分け,E群には約80%VO_2maxの強度で疲労困憊に至るまでランニングを行わせた.後肢骨格筋を対象に,Ca^<2+>-ATPase活性,Ca^<2+>取り込み・放出速度の3項目を測定し,以下の結果を得た. 1.足底筋(PL)では,Ca^<2+>-ATPase活性およびCa^<2+>取り込み速度にトレーニングによる低下が認められた.一方ヒラメ筋(SOL)では,3項目全てにトレーニングによる変化はみられなかった. 2.PLのC群では,Ca^<2+>-ATPase活性およびCa^<2+>取り込み速度について,一過性の運動に起因する低下がみられたが,同様の変化はT群では認められなかった. 3.SOLでは3項目全てにおいて,C群,T群ともに一過性の運動による低下が示された. 4.E群の疲労困憊に至るまでの走行時間とN群とE群における測定値の差異から,一過性のランニング中の各項目の低下速度を算出した.SOLでは,T群の低下速度は3項目ともにC群の約半分であった. 5.SH基の還元剤を反応溶液に添加しSR Ca^<2+>-ATPase活性を測定したが,還元剤を添加しない場合と比較し全ての群において変化がみられなかった. 以上の結果から,持久性トレーニングによって速筋のSRにおけるCa^<2+>取り込み能力が低下すること,および持久性トレーニングは一過性の運動に伴うSRの機能の低下速度を抑制する効果を持つことが示唆される.また,一過性の持久運動によるCa^<2+>-ATPase活性の低下には,SH基の酸化が原因していないことが推察される.
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