研究概要 |
遺伝性脊髄小脳変性症の内、現在8疾患がCAG繰り返し配列によりコードされる増大したポリグルタミン鎖により引き起こされることが明らかとなっている。これらの疾患ではCAGリピート数の増加に伴い発症年齢が若年化する傾向が知られているが、同じCAGリピート数でも疾患間で発症年齢が異なる。この理由については明らかにされていない。昨年度、我々はポリグルタミン鎖周辺のアミノ酸配列が増大ポリグルタミン鎖の凝集体形成能に影響を与える可能性を考え、truncated ataxin2,huntingtin,DRPLAP,ataxin3においてその凝集体形成能の違いと,凝集体形成能に及ぼす周辺アミノ酸配列の影響,及び個々のポリグルタミン病との関連を検討しCAGリピートの長さ依存性に34から36リピート間に閾値を持って凝集体形成能の増加を認めること、56CAGリピートを共通に含むtruncated ataxin2,huntingtin,DRPLAP,ataxin3の発現ではtruncated ataxin2及びhuntingtinがtruncated DRPLAP及びataxin3に比べ高率な凝集体形成能を示し、ヒトでの疾患重症度との傾向と相関することを報告した。今年度は同蛋白の凝集体形成能を変異を導入することにより変化させることができるか否かをtrancated ataxin2の変異導入体を用い検討した。凝集体形成能には周辺アミノ酸配列の疎水性が大きく関与していることが疑われたため,疎水性アミノ酸を親水性アミノ酸に変えた変異体を作成し、その凝集体形成能を検討した。その結果親水性アミノ酸導入変異体では凝集体形成が強く抑制された。この結果は増大ポリグルタミン鎖の凝集体形成能が僅かなアミノ酸変異により変化得る可能性を示している.
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