研究概要 |
外分泌腺においてcystic fibrosis transmembrane conductance regulator(CFTR)はCl^-イオンの腺房部での分泌と導管部での再吸収に重要な役割を果たす。CFTRの遺伝的機能不全症は、嚢胞性線維症とよばれ、全身性外分泌腺機能障害・呼吸器感染を誘発する致死率の高い疾患である。CFTRはABCトランスポーターに属するが、Aキナーゼによるregulatory(R)domainのリン酸化と、nucleotide binding domain(NBD)へのATP結合及びATP加水分解により開閉が制御されるCl^-チャネルとして腺腔側で働く。さらにCFTRは自身のCl^-チャネル活性以外に,他の複数のチャネルやトランスポーターを制御する制御因子として働き、その機能不全が嚢胞性線維症を引き起こす主因と考えられ始めているが、その分子機構は不明であった。CFTRの発現により制御される細胞膜ATP透過性について実験を行い、CFTRはATPを透過しないがCFTR R-domainと他の未知分子との接着により細胞膜ATPチャネル活性が付与され、ATP透過性はCFTRのR-domainのリン酸化とNBDでのATP加水分解により制御されることが、パッチクランプ法により、CFTR変異体を用い示されたため、yeast two-hybrid systemによりCFTR R-domain(アミノ酸590-820)及びR-domain変異体に接着する分子を検出した。その中で新規遺伝子ファミリーに属する3種類の遺伝子(CRIP1,CRIP2,CRIP3)について完全長のcDNAをクローニングした。その新規遺伝子ファミリーは相同性が高くZinc Ring Fingerを含むC末端領域でCFTR R-domainに結合し、N末端もしくは中心部領域で細胞内局在を決定する。さらにN末端と中心部領域はMAPKによりリン酸化制御されるとともに、SH3 domainやWW domainを含有する種々の分子に結合し、CFTRが分子複合体を形成して細胞機能調節を行う際、重要な役割を果たすことが考えられた。
|