研究概要 |
本研究では,発達性協調運動障害について,Wall(1982)の定義に従い「知的な点や神経筋系に問題がみられず,他の面では通常の能力であるが,文化的規範にかかわらず,運動パフォーマンスの実行に不正確さを示す子ども」とした。先行研究において,発達性協調運動障害がなかには子どもに何らかの困難を引き起こしていること,また将来においても影響があることが示唆しており,具体的な介入などの対応が早期から求められる。発達性協調運動障害の状態像の解明には,幼児期の発達性協調運動障害の様相を詳細に分析する必要がある。そこで本研究では運動検査バッテリーとチェックリストから構成されているM-ABCを用い,4-12歳を対象に,幼児や学童の運動協応性を測定することを目的とし実施した。下位検査の粗点成績を調べたところ,本検査が運動協応性の発達検査の特徴をもつことを示唆しており,また運動発達困難のスクリーニング検査として使用できることが示唆された。このようにM-ABCは2つの特徴をあわせもつが,使用する目的や用途に応じて,各下位検査を区別して考える必要がある。作成した独自の換算尺度で換算された合計値である総合I-Scoreが下位15%域であった子どもは,計24名であり、全体の17.3%にあたった。この数値については先行研究と比較しても、高いものであった。M-ABC検査バッテリーの信頼性については,検査を実施してから2週間後に,再検査を実施した全ての項目で,子どもの成績が同じ換算得点であり,検査自体として一定の信頼性が保たれていることを示されていた。 得られたM-ABCのデータより、発達性協調運動障害の類型化を試みたところ、(a)粗大運動に課題のあるグループ、(b)微細運動に課題のあるグループとに二分されることが明らかとなった。教育的な介入の場では、このような発達性協調運動障害の特性をもとに指導プログラムを構成することが必要となってくる。
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