研究概要 |
本研究は、分裂酵母においてカルシニューリン(CN)遺伝子破壊カミ細胞賛分裂異常を惹起する事に注目し、CNと細胞質分裂において機能的に関連する遺伝子群を分子遺伝学的アプローチで取得し,機能解析を行うことにより,細胞質分裂制御のネットワークとメカニズムを分子レベルで解明することを目的としている。分裂酵母においてCNの活性を抑制しても(CN遺伝子を破壊した場合、あるいは免疫抑制薬FK506の存在下)通常の増殖には影響がないが、細胞質分裂に著しい異常が認められる。我々は<細胞増殖に活性型のCNを必須とする分裂酵母変異体(免疫抑制薬に感受性を示す)>の取得と解析により,多くの変異体が細胞質分裂異常を示すことを見いだした。本年度はこれらの変異体の原因遺伝子のクローニングにより,Type II Myosinをコードするmp2,低分子量GTP結合蛋白質rabファミリーに属するypt3,およびSeptation Initiation Network(SlN)の構成因子であるCdc7をコードする遺伝子を同定し,これらの遺伝子群が細胞質分裂においてCNと機能的に関連することを見いだした。myp2変異体とypt3変異体はCNの活性を抑制すると多核・多隔壁という表現型を示し,細胞増殖を停止する。一方cdc7変異体はCNの活性を抑制すると,制限温度にシフトしたときと同様に多核だが中隔を形成できないSIN欠損(septation initiation defective(sid)の表現型が増悪した。他のSINの構成因子であるcdc11やcdc14の変異体も同様の表現型を示した。さらにCNの構成的活性型を発現するとこれらの変異体のsidの表現型が改善した。以上の結果から,CNは細胞質分裂においてSINの制御を含めて複数のステップに関与することが示唆された。また,CNが細胞内輸送を制御する可能性も示唆された。
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