[目的]脊椎動物の発生過程におけるホメオボックス遺伝子の領域特異的な発現は、体軸の形成過程において重要な役割を果たしている。しかしながら、ホメオボックス遺伝子を胚の限定した領域に発現させるメカニズムは未だに解明されていない。我々は、この問題にアプローチするために、アフリカツメガエル胚の腹側と後方に特異的なホメオボックス遺伝子(Xhox3、HoxB9)の発現を誘導する因子のスクリーニングをおこない、Xenopus E2F(xE2F)を得た。本研究では、前後軸、背腹軸の形成過程におけるxE2Fの活性制御機構を明らかにすることを目的として、機能スクリーニングをおこない、xE2Fの活性を調節する遺伝子を単離することを試みた(1)。また、前後軸形成の分子機構を解明することを目的として、xE2Fと同様に後方特異的なホメオポックス遺伝子の発現を誘導し、前後軸形成を調節する新しい遺伝子を単離することを試みた(2)。 [成果]1.xE2F RNAとアフリカツメガエル原腸胚ライブラリー由来のRNAをツメガエル胚に注入した後、アニマルキャップにおける遺伝子発現をRT-PCR法によって定量して、xE2FによるXhox3またはHoxB9の発現誘導活性を増強または抑制する遺伝子を探索した。その結果、xE2FによるXhox3の発現を増強する候補遺伝子を単離した。塩基配列の解析の結果、この遺伝子は新奇な遺伝子であることが分かった。 2.中枢神経系の発生過程では、前方神経の一部が後方化されて神経の前後軸が作られると考えられている。我々は、前方神経の誘導因子nogginをコードするRNAとアフリカツメガエル原腸胚由来のRNAをツメガエル胚に注入した後、アニマルキャップにおける遺伝子発現をRT-PCR法によって定量して、後方神経マーカーを誘導する遺伝子を探索した。その結果、アフリカツメガエルのp53転写因子(Xp53)を単離した。RNAインジェクション法によりXp53をアフリカツメガエル初期胚で過剰発現させて、前後軸形成に対する影響を解析した結果、Xp53発現胚では多くの胚で頭部構造の欠失(胚の後方化)が起こることが明らかになった。
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