研究概要 |
研究代表者らは,一般的な口腔内微生物にオゾン水を作用させると,低濃度かつ短時間のうちに優れた殺菌効果が得られることを平成12年度までに明らかにしており,これらの成果から,オゾン水が感染根管等の殺菌に有効ではないかと考えた. そこで,平成13年度は,感染根管等に対するオゾン水の殺菌効果について作用濃度と作用時間の両面から検討を行なった.すなわち,感染根管等から分離される代表的な細菌のEnterococcus faecalisを用い,菌体単独の場合はオゾン水の殺菌効果0.5mg/Lという低濃度で,10秒〜30秒程度の短時間のうちに,殺菌効果を示すことを明らかにした.また,滅菌ウシ抜去歯を用いたEnterococcus faecalis単独の模擬感染根管モデルにおいて,4mg/Lのオゾン水による120秒間処理によって根管内の細菌数を約1/10に減少させることができ,さらにキャビテーションを併用するとほぼ根管内を無菌化することができることを明らかにした. 次いで,平成14年度は,オゾン水処理の安全性をMTT assayによって確認したところ,ボビドンヨードなどの口腔内の含嗽に頻用されている消毒薬と比較して,オゾン水の細胞毒性はほとんど変わらず,安全性には問題がないことが明らかになった.また,複数菌種による模擬感染根管モデルを作成し,より実際の病態および臨床処置に近い形で,オゾン水による根管内無菌化の効率を血液寒天培地での嫌気培養検査と蛍光顕微鏡による観察によって検討したところ,根管内のみならず象牙細管深部まで侵入した細菌についても,良好な殺菌効果が確認された. これらの結果から,オゾン水は従来の消毒剤とほぼ同等の殺菌効果を有し,安全性も高いことが明らかになった.
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