研究概要 |
本研究はヒト歯肉上皮細胞(HGK)およびヒト歯肉線維芽細胞(HGF)において,37℃,3時間の熱処理でconstitutivelyなタンパク発現が,42℃,3時問でストレスタンパク(シャペロン分子)のHsp (heat shock protein)が誘導されることを明らかにしてきた。 今回,歯周病原性細菌A. actinomycetemcomitansをHGKに作用後,ストレスタンパクの発現応答をRT-PCR法およびwestern blotting法によって解析した結果,Hsp27, Hsp60, Hsp70の発現が認められた。この発現は培養上清には無くcell layerにみられた.Hsp90はHGKでは37℃, 42℃の熱処理で発現が認められなかった。ストレスタンパクを安全かつ選択的に誘導して強力な細胞保護作用を発揮する,シャペロン分子誘導剤であるGeranylgeranylacetoneをHGKに作用させた場合northern blotting解析からCOX-2, IL-8のmRNAの発現を誘導した。HGKではCOX-2のmRNAの発現は37℃,3時間の熱処理でも増加した。HGFへの熱処理では,Hsp104の発現は37℃, 42℃いずれも発現が確認できなかったが,Hsp90では42℃で増加した。Hsp70, Hsp40の発現も同様に42℃の熱処理で増加した。 最終的には歯肉への温熱効果を踏まえて骨膜結合組織への熱処理の影響を,in vivoで捉えていく必要があるが,動物実験報告から,Hsp104/Hsp70/Hsp40系で,凝集したタンパクが脱凝集し活性を回復すること,細胞内で機能するHsp90がタンパクの変異を抑制し,恒常性に働くと考えられている。本研究のヒト細胞への熱処理によるHsp発現結果から,ストレスタンパクと歯周組織再生の関係を検討していく上で同様な事象が起きている可能性が示唆された。
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