研究概要 |
本研究は,日本で行われている経団連の自主的取り組み型での環境政策と従来からあるコミットメント型の環境政策を比較検討することで,環境保全技術の研究開発とクリーン開発メカニズムなどを通じた技術の国際的移転を含む我が国の環境政策,そして独禁法の適用に対して有用な含意・政策提言を行っている。 1,自主的取り組みの下での環境保全のための研究開発に対しては協力(カルテル)投資を認める方が社会的に望ましい場合がある。特に,生産費用削減の研究開発投資ではスピルオーバー効果が十分大きいときに限って協力投資が望ましいとするのと異なり,産業内の企業数が少ない場合ではスピルオーバー効果が十分小さいときにも協力投資が望ましい。 2,自主的取り組みの下での協力投資には逸脱の誘引がある。協力投資が安定的であるために企業に自主的取り組みの採用が無限に継続するものと認識させることが必要である。 3,越境汚染の存在する国際経済においては,環境被害が大きくなるにつれて先進国から途上国への環境保全技術の実行可能性が低くなる。また,環境被害の深刻化に伴い,技術移転は先進国の社会厚生を高める。さらに,環境技術の格差か被害の程度が小さくなければ環境技術の移転は途上国の社会厚生を低める。 4,越境汚染が存在するとき先進国と途上国との環境保全技術の格差が大きいほど技術移転が実現可能でかつ社会的に望ましい可能性が高くなる。 5,排出税の国際協調政策を実施することが国際的に望ましくない場合もあるが,それは越境汚染の程度が深刻でなく,かつ保持する環境保全技術が高いときである。
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