研究概要 |
CuやRuの強相関電子系酸化物では,電子相関の変化に伴い,金属-非金属転移,エキゾチックな超伝導・磁性が観測される.特にLa214型結晶構造を持つ系では,磁性と超伝導対称性,格子変形と電子状態の関係の統一的理解をめざした研究に適している.電子相関を変化させるには,圧力実験が効果的である.圧力は系を乱すことなく,電子相関,構造を制御可能であり,各種物理量の圧力係数決定,相図完成などが可能である. 平成14年度で明らかになったことは次の通りである. 1)反強磁性を基底状態に持つモット絶縁体Ca_2RuO_4の10GPa,ヘリウム温度までの圧力相図を作りモット絶縁体Ca_2RuO_4を加圧し0.5GPaで金属化すること,そして,この絶縁体-金属転移は反強磁性-強磁性転移を伴っていることを発見した.また,この強磁性転移温度は5GPa以上の加圧で減少し始め,これを外挿すると10GPa程度圧力でT_c消失と超伝導の出現,すなわち量子臨界点が期待される.また,これらの相転移はRuO_68面体の歪みによる電子状態の変化であると考えられる.そこで高圧下中性子線回折実験をM.Braden(ケルン大(独))との共同研究で行った結果,我々の推測を裏付けるように,絶縁体-金属転移はRuO_68面体のc軸方向への伸張(flatting),反強磁性の消失は斜方晶性の低下(tiltingの抑制),強磁性の出現はRuO_68面体の回転(rotation)と関係していることがわかった.今後,この系の多彩な相図を理解するにあたり,スピン-軌道相互作用を考慮した議論を行う必要がある.
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