研究概要 |
本研究では,ミクロ的な側面からもマクロ的な側面からも工学的に扱いやすく,高品質溶接(レーザ,電子ビーム,TIGなど)部の温度変化や応力・歪み分布を精度よく推定することの出来る,新しい熱伝導応力解析手法の確立を目指している。本年度研究では,昨年度研究においてその基礎を検討・提案した新しい3次元熱伝導および熱弾塑性解析手法の詳細な検証と確立を試みた。さらに,本解析手法を用いて,これまで評価することが困難であった溶融部極近傍に発生する高温割れの新しい評価手法を提案し,溶接部の強度・信頼性向上とその保証法についても検討した。概略,以下の結論を得ることが出来た。 <3次元熱伝導・熱弾塑性解析手法の高精度検証と確立> これまで高精度かつ詳細な解析が困難であった,キーホール型のレーザ溶接に対応できる新しい3次元熱伝導・熱弾塑性解析手法を提案した。また,本解析手法の高精度な検証を行うため,溶接部極近傍の高温部の高速溶接(レーザ溶接)中の温度・歪み履歴をダイナミックかつ高精度に計測する手法を検討・提案した。温度履歴計測は,埋め込み型熱電対により溶接部各位置での詳細な温度履歴を計測した。またCCDカメラによる溶接中の溶融池形状計測を試みた。歪み履歴計測は,CCDカメラを用いた新しい高温ひずみ計測手法を提案した。以上の計測結果と新しく提案した3次元熱伝導・熱弾塑性解析手法による結果とを詳細に比較・検討し,本解析手法の妥当性を確認することが出来た。 <高温割れ(液化割れ)発生評価手法の提案> 上述の新しく提案・確立した3次元熱伝導・熱弾塑性解析手法を用いて,液化割れ発生試験結果と対応させることにより、これまで評価することが困難であった溶融部極近傍に発生する液化割れの新しい評価手法を提案した。液化割れには,溶融部極近傍の溶接熱影響部生じる相当塑性歪みが大きく影響しており,当該値を用いることにより,液化割れ発生を力学的かつ定量的に評価・予測することが出来るようになった。さらに,小型で簡便な試験条件で,大型の実機溶接継手部での液化割れ発生を評価・予測することの出来る,新しい小型標準試験片を用いた液化割れ発生試験法を検討・提案した。
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