研究課題
基盤研究(C)
本研究においては順次公開されつつある上海博物館蔵戦国楚竹書の読解を基礎にして、それと関連する戦国儒家思想史の問題について考察を行った。報告書としてまとめた具体的な研究成果は以下の通りである。まず同一の冊書をなしていたと考えられる『孔子詩論』『子羔』『魯邦大旱』について、諸家の説を折衷してその訳注を提示するとともに、それぞれの篇の簡序と冊書全体の復元を行った。その結果、三篇は『孔子詩論』『魯邦大旱』『子羔』の順で冊書をなしていたこと、『孔子詩論』は前半が所謂「満写簡」、後半が所謂「留白簡」の順序であり、かつ「留白簡」の留白部にも本来は文字があり、簡1とされていたものが実はその末尾に位置すると推定されること、『子羔』は一篇としてのまとまりを持つこと、表題の「子羔」が記される簡は冊書の末尾から数えて三番目の簡になること、などである。また、『孔子詩論』に見える「誠」について、それが『中庸』新本の「誠者、天之道也。誠之者、人之道也」の源流のひとつの所在を示していることを示した。また『性情論』についてもその思想的な内容が明らかになるように留意した形での訳注を提示するとともに、その性説についての解析を行い、それが基本的に性善説的思考に基づきながらもいまだ孟子の域に達していないものであることを示した。さらに『緇衣』について、その言行一致の思想についての解析を行い、これが「名」に付随する「ふさわしさ」を行為の基準とする思考に基づくものであることを明らかにするとともに、これが『中庸』の古層の部分と共通する思考であることを示し、その『中庸』新本の「誠」の思想との関係を新たにとらえ直した。
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鹿児島大学教育学部研究紀要(人文・社会科学編) 55
ページ: 1-15
110004994141
Bulletin of the Faculty of Education, Kagoshima University Cultual and Social Sciences 55