研究分担者 |
伊藤 清一 広島大学, 大学院・先端物質科学研究科, 助手 (70335719)
横山 新 広島大学, 大学院・先端物質科学研究科, 教授 (80144880)
大高 一雄 千葉大学, 先進科学教育センター, 教授 (40010946)
吉田 陽一 大阪大学, 産業科学研究所, 教授 (50210729)
鷲尾 方一 早稲田大学, 理工学総合研究センター, 教授 (70158608)
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研究概要 |
フォトニック結晶は,これと相互作用させる電磁波の波長程度の格子定数を持つ人工結晶である.電磁波としてレーザーを用いる場合,格子定数は1μm以下になる.この,フォトニック結晶と電子ビームとが関連するふたつの実験を行った. 第一の実験はフォトニック結晶からの放射光発生である.回折格子表面に平行に電子ビームを走らせたときに,格子面と垂直方向に発生する放射光はスミスパーセル光として知られている.回折格子の代わりに2次元フォトニック結晶をもちいると,電子ビームの分散とブリリアン図との交点に対応する(ω,k)を持つ光の観測が期待される.阪大産研のエネルギー35MeVバンチ電荷1nCバンチ長5psのレーザーフォトカソードrf電子銃ライナックと,広大製Siフォトニック結晶による実験では,予期されない(ω,k)成分を持つ放射光が豊富に観測された.スミスパーセル光を観測するためには電子ビームを格子定数以内の距離(すなわち1μm以下)で結晶表面に平行に走行させる必要がある.しかしビーム自体のサイズが数mmであったため,この条件を満たすことは不可能であった.このため,スミスパーセル効果以外の機構で発生した光が雑音として観測されたものと思われる. 第二はフォトニック結晶ファイバによる電子加速である.レーザー加速の問題点のひとつは,レーザーの焦点付近でしか大きな加速勾配が得られないことである.小径で長距離レーザーを伝播させる技術が必要である.通常の光ファイバは周囲より誘電率の大きいコアに光を閉じ込める.この構造ではビームを走行させる空間がない.しかしフォトニック結晶のバンドギャップに対応する光(ω,k)は結晶内部に入り込めないという性質を利用すれば,コアを空間としてそこにレーザーを閉じ込めることが出来る.このときレーザーは誘電体との相互作用により縦電場を作るので,この電場で電子ビームを加速することを試みた.ファイバはCrystal Fibre社800nm仕様の,直径6μmのコアを三角格子をなす1μmの孔がとりまいた形状のものを使用した.12mm長のファイバのレーザー透過率は8%強で,ここにパワー700GW,パルス幅50fs,直径30μmのレーザーを入射したところ,450keVまでの電子を観測した.またこれとは別に再現性は悪いが2MeV程度の電子群も観測された.実験で得られたレーザー透過率はカタログ値の1/10程度なので,レーザーとファイバーのカプリングに改善の余地がある.
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