研究概要 |
人工血管や人工弁といった血液循環系の人工臓器は臨床応用が開始されて以来,数十年の歴史を有する.従来までの「臨床的研究」により得られてきた実績・成果により,その性能や安全性も向上してきている.これらの人工臓器による治療とは生体と機械とが,いかに無理なくマッチング(適合)していくかを追求していくことにある.すなわち,より生体に適合性が高い機械を創り使いこなしていくことが重要である.その適合性には力学的,医学生物学的など様々な視点がある.現状としてはこれら様々な分野,例えば工学,臨床医学で独立した研究がなされているが,それらを統合して人工臓器の総合的な評価システムを構築するには到っていない.本研究では今後の人工臓器の開発や応用に有用なハードおよびソフトウェアを構築した.ハードウェアとしては研究代表者らが数年に渡り開発してきた循環シミュレータを改良し,補助人工心臓や人工血管の体外における力学的な性能評価を可能とした.また循環シミュレータ一の開発の一環として新規的な圧力センサーや拡張性を有する医療用チューブを考案して特許を出願した.一方,ソフトウェアとしては人工弁をはじめとする人工臓器やその他の診断治療の評価を目的とするデータベースシステムの構築を試みた.その応用としてはPWV(動脈内脈波伝播速度)と生命予後について心臓力テーテル検査を受けた288名を解析対象とした.その結果PWVは5%の有意水準には達しなかった(p値=0.71)ものの,PWVの増大にともない死亡の危険度が増加する傾向が認められた.これらハードおよびソフトウェアを有機的に組み合わせることにより人工臓器の総合的な評価が可能と考える.
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