研究概要 |
本研究は,微小変位地形の解析に基づく内陸活断層の最新活動時期の解明と,津波堆積物に基づくプレート間地震の発生時期の解明を通して,東北日本における断層活動の時空間分布を明らかにし,島弧における断層の活動特性を検討することを目的としている。 内陸活断層については,今年度は福島盆地西縁断層帯および会津盆地東縁断層帯を対象にして調査を行った。福島盆地西縁断層帯では,完新世の段丘面を変位させている微小変位地形を対象に地形断面測量を実施し,最近の断層活動に伴う変位量を推定した。また,既往研究で明らかにされている平均変位速度や最新活動時期とあわせて検討し,将来の地震発生確率を算定した。会津盆地東縁断層帯では,昨年度に引き続き地表踏査を行い,地形面の変形を現地で確認した。 一方,津波に関する調査では,昨年度に引き続き,常磐海岸北部の旧ラグーンにおいてハンディー・ジオスライサを用いて地層を抜き取り,津波堆積物の広がりや旧汀線の変化を検討した。昨年度,旧ラグーン中央で認められた3枚の津波堆積物は,旧湾奥まで広がっており,2700-2400年前の小海進後にラグーン型の干潟となったところに来襲したことがわかった。 常磐海岸南部においては,完新世に離水したと考えられる明瞭な岩石海岸地形がないものの,沖積低地の海岸部にみられる浜堤列の発達の違いに注目すると,南ほど旧汀線が高いことが明らかとなった。これは最終間氷期の海成段丘の旧汀線高度と同じ傾向である。
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