公募研究
新学術領域研究(研究領域提案型)
本研究は、緑藻クラミドモナス細胞が、光受容装置「眼点」で光を感受したのち、2本の鞭毛打を調節して遊泳方向を変え、正または負の走光性そ示すまでの機序を明らかにすることを目的としている。研究は2つの方法で行った。1つめが、クラミドモナスが遊泳方向を変える様子を高速度ビデオカメラで撮影し、2本の鞭毛をどう使い分けているかを明らかにすることである。2本の鞭毛は、眼点からの距離で区別される。正または負の走光性を示しやすい株、さらにそれらの株の走光性を正または負に誘導する酸化剤・還元剤の処理後で、鞭毛がどのように使われるかを詳細に観察した。その結果、光を浴びた瞬間に強く打つ鞭毛(利き鞭毛)が2つの株で異なることがわかった。さらに、それぞれの株が通常と反対符号の走光性を示すときには、強打をする鞭毛はあくまで「利き鞭毛」であり、その強打のタイミングを遅らせることで遊泳方向を切り替えていることがわかった。さらに、「利き鞭毛」を決める要素が鞭毛内の細胞骨格構造「軸糸」ではなく、膜もしくはマトリクスに存在することも明らかになった。現在論文執筆中である。2つめが、新たな走光性変異株の単離と解析である。上記のように野生株は「酸化処理で正、還元処理で負」の走光性を示すが、この関係が崩れている変異株を複数単離した。そのうちの2つについて原因遺伝子の特定に成功し、論文発表した。1つは眼点における正確な光照射方向の判定に必要なカロテノイド色素合成経路の酵素であり、色素が光受容において重要な働きを示すことが明らかになったとともに、副産物として細胞が凸レンズとして振る舞うことが明らかになった。これは基礎研究としての波及効果が高い結果であり、各種メディアでも取り上げられた。もう1つはミトコンドリア局在が予想されるタンパク質で、オルガネラ間のクロストークが走光性の方向決定に寄与することを初めて示した。
28年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 3件、 謝辞記載あり 4件) 学会発表 (19件) (うち国際学会 8件、 招待講演 5件) 備考 (1件)
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http://www.res.titech.ac.jp/~junkan/Hisabori_HomePage/index.html