研究課題
特定領域研究
平成16年度の研究では、がん細胞の浸潤や血管新生における血管内皮細胞の遊走に必須であるMMP2/TIMP2/MT1-MMPの安定複合体と接着分子CD44との間のソフトな相互作用を検出するために、ALPHASCREENを用いたソフトな相互作用検出法を開発し、この相互作用を阻害する低分子性化合物を探索することを目的として研究を行った。今年度の研究成果の概要を以下に述べる。MT1-MMPおよびCD44に対して、当初はアクセプターおよびドナービーズに固定したそれぞれの抗体を介してタンパク質間の相互作用を検出する予定であったが、3カ所での相互作用の形成(抗体1/MT1-MMP/CD44/抗体2)が必要となるため、検出感度が悪く相互作用の検出ができなかった。また、MT1-MMPは複合体を形成させている間に自己消化を起こしてしまい、バラバラのフラグメントになったものでは相互作用が起きないことも明らかになった。そこで、自己消化を防ぐためにMMP阻害剤をバッファー中に添加し、さらにCD44をドナービーズに直接固定化することで相互作用を2カ所に減らしたところ、384穴マイクロプレートを用いた小スケールアッセイにおいて、タンパク質の検出感度1pmol(100-200ng/サンプル)程度で相互作用を検出することに成功した。また、CD44のステム領域とMT1-MMPの結合部位(ヘモペキシン様ドメイン:PEX)を、それぞれ直接固定したビーズを用いて、CD44とMT1-MMPの相互作用をダイレクトに検出する高感度アッセイの検討を行っている。アッセイに用いるPEXを供給するため、大腸菌を用いて組み換えPEXの発現系を導入した。なお、組み換えPEXは分子量が2万程度でNMR測定が可能となるため、今年度中に^<15>Nでラベルしたタンパク質を用いてNMRによる相互作用の検証を行う予定である。一方、本アッセイで用いるALPHAビーズは蛍光顕微鏡下で観察可能なことから、抗MMP抗体コートしたALPHAビーズをヒト子宮がん由来HeLa細胞培養液中に添加したところ、MMPが局在している細胞の浸潤突起に結合している様子が観察された。そこで、ALPHAビーズと蛍光タイムラプスイメージングを組み合わせて、MMP2/TIMP2/MT1-MMP複合体の細胞表面上での挙動を一分子単位で観察できるシステムの構築を検討中である。さらに、共焦点レーザー顕微鏡を用いて、680nmのレーザー光をあてると相互作用を起こしているALPHAビーズだけが蛍光を発することを確認できたため、生細胞表面で起きている膜タンパク質間相互作用の検出法についても検討中である。
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Marine Drugs 2
ページ: 55-62
J.Nat.Prod. 67
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