配分額 *注記 |
11,900千円 (直接経費: 11,900千円)
2006年度: 1,700千円 (直接経費: 1,700千円)
2005年度: 3,400千円 (直接経費: 3,400千円)
2004年度: 6,800千円 (直接経費: 6,800千円)
|
研究概要 |
本研究はほとんど研究の行われていなかった我が国沿岸の寄生性渦鞭毛藻類の多様性を明らかにし、その進化過程を解析することを目的としたものである。本研究の結果,日本各地から5属(Blastodinium, Oodinium, Amoebophrya, Syndinium, Duboscquella)8種の寄生性渦鞭毛藻類の存在を明らかにできた。このうち4属が日本新産属である。それぞれについて,形態観察,微細構造観察を行い,さらにSSUrDNAを用いた分子系統解析をおこなった。その結果これら5属は,系統的には典型的な渦鞭毛藻,Marine Alveolate Group I(MAG-1),Marine Alveolate Group II(MAG-II)のいずれかの系統群に含まれることがわかった。このうちMAG-1は発見以来環境クローン配列のみからなる系統群として認識されていた系統群で,本研究によって初めて有鐘繊毛虫類に寄生するDuboscuellaがこの系統群に属することを明らかになった。また,環境DNAで捕捉された生物の起原はこれら微小な寄生性渦鞭毛藻類の遊走細胞である可能性が高い事を強く示唆するものとなった。MAG-Iの環境クローン配列が世界中の様々な環境の海洋から見つかることは、世界中の海が大量の寄生生物の遊走細胞で満ちあふれていることを意味し、本研究は海洋における寄生生物の遊走細胞の生態的重要性という新しい視点をもたらした。また,Duboscquellaの研究では,形態的にほとんど区別がつかないが,遺伝的にはかなり異なっている姉妹種の存在を示唆した。以上,本研究によりほとんどゼロに近かった日本沿岸の寄生性渦鞭毛藻類の多様性に関する知見の増加に貢献した。また,MAG-1の正体の一部をつきとめ,その生態学的な意義を明らかにしたことは海洋学に貢献するものと考えられる。
|