研究概要 |
東アジア諸国の貿易自由化は,東アジア経済の成長に寄与したが,1997年のアジア通貨・金融危機以後東アジア諸国の成長はストップした。そのような状況において、東アジア諸国は危機の再来を防止するために地域協力を積極的に進めるようになり、特定の国々との間で貿易を自由化する自由貿易協定(FTA)が多くの国によって締結された。FTAの歴史は浅いが、急速に拡大していることから、その効果に対する関心は高い。 浦田は、FTAを様々な角度から研究し、FTAは期待されるようにFTA加盟国間の貿易を促進することを確認した。さらに、理論的には非加盟国との貿易を抑制する効果が考えられるが、実証分析からは必ずしも、そのような効果が生じるわけではないことが示された。 近藤は,産業構造を分析する手法である産業連関表の三角化を投入係数行列の上三角和を最小化する最適化問題とみなして,その効率的算法開発について検討した。{0,1}整数計画問題として問題を表現した結果,整数制約を緩和した線形計画問題の可能集合は非整数頂点を持つが,統合大分類の産業連関表については整数解が得られる事がわかった。また,廃棄物と副産物の発生,再利用を明示的に考慮した産業構造の分析のため,既存の1地域の廃棄物産業連関モデルを他地域間を考慮できるものへと拡張し,環境負荷を最小化する廃棄物等の地域間移動シナリオを検討した。 鷲津は,上記の研究をふまえそれを総括する形で現在の東アジアの発展状況を産業構造理論的に明らかにした。レオンチェフにはじまる過去の発展理論を改めて吟味すると,現在の東アジアの経済構造もその俎上で理論化されることを示した。さらに,現在の東アジアの経済と環境の相互依存関係を,各国消費者の立場から解明することを試みた。
|